ついにはじまった離乳食!
やはり心配なのは「食物アレルギー」ですよね。
特に卵は、乳幼児の食物アレルギーの原因物質第1位ですから、心配になって当然です。
私自身も、ドキドキしながら子供に初めて卵を与えた日を覚えています。
以前は、「アレルギーが心配な食品は、なるべく遅めに食べさせる」という考え方がありました。
ところが数年前に発表された研究結果により、離乳食と食物アレルギーに関する考え方は大きく変わり、ガイドラインも改定されたのです。
そこでこの記事では、子供に卵はいつから与えられるかについて、最新のガイドラインや研究結果を見ながら解説します。
いちか 2児の母。
管理栄養士としてクリニックに勤務。その後大学院に進学して博士(医学)を取得。現在は子育ての傍ら栄養ライターとして活躍中。得意分野は悩めるママの栄養指導。科学的根拠がある栄養情報をお届けします。
子供に卵はいつから与えられる?最新ガイドラインの見解
2019年に改定された厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(1)」では、鶏卵を与えるタイミングが離乳食初期(生後5〜6カ月頃)に記載されるようになりました。
離乳食を初めてすぐに卵を与えていいの?
実際には離乳食は、つぶしがゆ1さじからゆっくり開始します。
つぶしがゆを少しずつ増やしていき、1週間経ったら次は野菜を1さじ……というほどのゆっくり具合で離乳食は進めますよね。
そのため、5カ月に離乳食を開始したとしても、すぐに卵を与えるということではありません。
お米のほかに野菜、豆腐など色々な種類を食べられるようになった6カ月以降が、卵を与える目安になるでしょう。
卵を与える時期と食物アレルギーとの関係は?
卵を与える時期と食物アレルギーとの関連について、ガイドライン改定の根拠となる研究結果が2016年国立成育医療研究センターより発表されました(2)。
研究の概要は次の通りです。
- 生後数カ月からアトピー性皮膚炎を発症した赤ちゃんの中で、生後6カ月の時点でスキンケアとステロイド外用薬で皮膚炎が寛解した子を2つのグループに分けた
- 片方のグループには、生後6カ月から加熱全卵粉末50mg(固ゆで卵0.2g相当)、生後9カ月から250mgを与えた
- 1歳の時点で検査したところ、卵を食べていたグループの方がアレルギー発症率が低かった
この結果から、症状が安定したアトピー性皮膚炎のある赤ちゃんでは、卵の開始を遅らせることは卵アレルギーの予防にはならないことがわかりました。
皮膚のケアが重要
アトピー性皮膚炎などの湿疹や肌荒れがある赤ちゃんは、離乳食の進め方にちょっと気をつけましょう。
肌荒れにより傷ついた肌からもアレルギーの原因となる物質は入り込み、アレルギー発症の原因になることがわかっているからです。
肌荒れがある場合には、授乳・離乳食ガイドラインではなく必ず医師の指示に従ってくださいね。
「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言(3、4)」では、「鶏卵の摂取を開始する前に、アトピー性皮膚炎を寛解させることが望ましい」と述べています。
しかし同時に、次のようにも書かれました。
- 鶏卵アレルギー発症予防を目的として、医師の管理のもと、生後6カ月から鶏卵の微量摂取を開始することを推奨する
- 鶏卵の感作のみを理由とした安易な鶏卵除去を指導することは推奨されない
((3)より引用)
ポイントをお示ししますね。
- 肌荒れがある場合は、まずはそのケアが優先
- 肌荒れがある子どもの場合は、医師の管理のもとで卵をごくわずかから与え始める
- 自己判断で必要以上に恐れ、卵を与えるのを先延ばしにしない
上で紹介した研究結果も踏まえると、肌荒れのない・落ち着いている赤ちゃんでは、『卵アレルギーを恐れるあまり卵を与える時期を遅らせる必要がない』ということです。
アレルギーが心配だからと離乳食の開始をためらっていたママやパパからすると驚きですよね。
しかしここで注意したいのは、「なるべく早く卵を与えた方がアレルギーになりにくい」ではありません。
授乳・離乳のガイドラインどおり、離乳食が少しずつ進んだ生後6カ月頃から、ごく少量づつ与えましょうね。
問題なく食べられれば、卵からとれる栄養源はとても貴重です。
ちなみに、特別に医師から指示がない場合に、お母さんが妊娠中や授乳中に卵を食べないことは、子どものアレルギー発症とは関連しないこともわかっています。
『子どもがアレルギーを発症しないか』を心配する気持ちはとてもよくわかります。
しかし、必要以上に新しい食品を避けることはせず、子どもの様子を見つつガイドラインに沿って離乳食を進めましょう。
子供に卵はどう与える?
ここでは、子供に卵を与える際のポイントをお伝えします。
まず、卵は卵黄→全卵の順で与えましょう(1)。
離乳食初期(生後5〜6カ月)
最初は固ゆでにした卵をすぐにむき、中心部の卵黄をすり潰して与えます。
心配なら、最初は耳かき1杯程度から様子を見ながら増やして大丈夫ですよ。
食物アレルギーの発症は、1回目に与えた時とは限りません。
2回目や、量を増やした時などは、その後の子どもの様子をよくみましょう。
卵だけに限りませんが、新しい食品を食べさせる際は、なるべくかかりつけの小児科が開いている時間帯(できれば午前中)にしましょう。
私も初めて子供に卵を食べさせるときは、アレルギーが心配で、すぐに病院に駆け込めるようきちんと化粧をし(笑)、机の上に保険証を出してから挑みました。
離乳食中期(生後7〜8カ月)
2回食になり、食べられる食品も少しずつ増えてきます。
初期に引き続き少しずつ卵黄の量を増やしていき、1個分程度まで食べられるようになったら、全卵に進みます。
最初は、生卵の黄身と白身を分けた黄身の方(白身が少量付着している)で作ったスクランブルエッグなどが食べやすいですよ。
余ったものは冷凍できます。
徐々に白身の割合を増やし、全卵で1/3個分くらいまでが目安です。
離乳食後期(生後9〜11カ月)
3回食になり、歯ぐきで噛めるようになる時期です。
全卵で半分くらいまで食べられるようになります。
離乳食完了期(生後12〜18カ月)
手づかみ食べを楽しむ時期です。
卵焼きはちょっと潰れやすいですが、ほどよい柔らかさですし汚れにくいので手づかみ用としてもおすすめですよ。
全卵で半分〜2/3個くらいまで食べられるようになります。
卵はいつから?離乳食のまとめ
子供に卵をいつから与えられるかについて、ガイドラインや研究結果を紹介しながら解説しました。
ポイントをおさらいしましょう。
- 肌荒れがない子供では、生後6カ月頃から少しずつ卵を食べることが推奨されている
- 卵の摂取を遅らせることで、卵アレルギーの予防になるという根拠はない
卵はすべての必須アミノ酸を含む貴重なタンパク源でありながら、ビタミンC・クロム・食物繊維以外の全ての栄養素を含む優秀な食品です。
そのため、必要以上に卵の摂取を遅らせることはあまりいいことではありません。
不安な気持ちは健診や予防接種などで病院を訪れた時に、相談してみてはいかがでしょうか。
離乳食ガイドラインは、母子手帳にも記載があります。
インターネットやSNSの情報に惑わされず、基本的にはガイドラインに沿いながら、子どもの様子を見て進めていってくださいね。
引用・参考
(1)厚生労働省.授乳・離乳の支援ガイドhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html
(2)https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)31418-0/fulltext
(3)第2回「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会.食物アレルギーの観点から授乳・離乳を支援するポイントhttps://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000464805.pdf
(4)日本小児アレルギー学会.「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説https://www.jspaci.jp/uploads/2017/10/97d5be77f6c2e7973e69a30a80a2a84b.pdf