『こだわりのオーガニック』『無添加で安心』
こんな言葉が踊る商品をスーパーで目にした時、隣に並んでいる「そう書かれていない安い商品」を手に取るのに罪悪感を覚えるのは私だけでしょうか?
「子どもにはなるべく安心安全なものを食べさせたい。でも、全てのものをオーガニックや無添加にするにはお金がかかりすぎる。」子育て家庭にはそんなジレンマがありますよね。
しかし、そもそもオーガニック・無添加食品って何でしょう?やっぱり子どもには多少無理してでもオーガニックを与えるべきなのでしょうか?この記事では、そんな疑問について解説します。
いちか 2児の母。
管理栄養士としてクリニックに勤務。その後大学院に進学して博士(医学)を取得。現在は子育ての傍ら栄養ライターとして活躍中。得意分野は悩めるママの栄養指導。科学的根拠がある栄養情報をお届けします。
オーガニックと無添加は違うの?
オーガニックに無添加食品。どちらも体に良さそうな気がしますが、この2つには明確な違いがあります。それぞれご紹介しますね。
オーガニック食品
オーガニック食品とは、有機食品のことを指します。有機食品とは、できる限り環境への負荷を少なくする方法で育てられた食品です。
ただ単に農薬や食品添加物を使っていない食品を言うのではありません。
『「環境への負荷」を考えた結果として、それらのものを使っていない』と言う方が近いですね。
たとえばお米を収穫したあとに残った稲を家畜の餌とし、家畜が出したフンを堆肥にして、また作物を作るための土とする、というようなサイクルです。
当然ながら、農薬や添加物を使うよりも何倍も手間や時間がかかり、その分価格も高くなります。
また、誰でも簡単に「オーガニック食品」を名乗れないよう、日本には「有機JAS制度」という基準があります。
有機JAS制度はJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づき、環境負荷を提言するためのいくつかの基準を満たした有機農産物・有機加工食品の生産者に「有機JASマーク」の使用を認める制度です。
使用が認められた業者は、その基準を満たして生産された食品について、有機JASマークをつけられます。
画像引用:農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
無添加食品
無添加食品とは、食品が作られる全て(原材料の時点から、加工食品の完成まで)の工程で、食品添加物が一切使用されていない状態をさします。
こう聞くと「安全」「無添加っていいな」と思いますよね。
ところが、無添加食品については、2018年1月に一般社団法人 日本食品添加物協会が『「無添加」、「不使用」表示に対する見解』という文書を公表し、簡単にまとめると次のようなことを述べました。
- 「無添加」と表示されている商品の中には、加工工程全てで食品添加物を使用していない旨がはっきりしていないものも多く、消費者に不正確な情報を与えている
- 「無添加だから安心」などの表示が、食品添加物の意義や有用性・安全性に対する誤解を招いている
- 加工するのにもともと必要のない食品添加物を「〇〇無添加」と表示しているものがある
参考
一般社団法人 日本食品添加物協会.「無添加」、「不使用」表示に対する見解 https://jafaa.or.jp/pdf/kyokai/180117_kyokaikenkai.pdf
つまり、私たち消費者の「なんとなく食品添加物は入っていない方が安心な気がする」という不安をあおり、商品をよく見せようとする表示があるということには注意が必要です。
また、「無添加」は、あくまで食品添加物を指しているということも覚えておきましょう。似たような言葉で「無農薬」(農薬を使わないで生産する)があります。
オーガニックや無添加食品を選ぶべき?
では、子どものためにはオーガニック食品や無添加食品を選ぶべきでしょうか?
ここからは、管理栄養士の私の考えをお伝えしますね。(あくまでも個人の見解です)
オーガニック食品を選ぶべき?
子どもが十分に食べられる量を確保できる範囲で、オーガニック食品を選んでみてはいかがでしょうか。
「子どもが十分に食べられる量を確保できる」が大前提であることを忘れてはなりません。
オーガニック食品は製造までに手間がかかる分、価格が高いです。すべての食品をオーガニックに変えようとすると、今までより食費が倍に。それでも大丈夫でしたら問題ありませんが、多くの家庭はそうではありませんよね。
「オーガニックの肉を買ったから、量はいままでの半分よ」では本末転倒です。成長期の子どもは、大人よりもたくさんの栄養が必要ですから、量の確保が最優先です。
オーガニックというのは、あくまで必要なエネルギーや栄養素をとれた上での付加価値のような位置付けだと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
無添加食品を選ぶべき?
食品添加物に対する正しい知識を持った上で、ライフスタイルに合わせて無添加を選んでみてはいかがでしょう。
そもそも、食品添加物とは、本当に避けるべき物質なのでしょうか。食品添加物の主な役割をお示ししますね。
- 栄養価を保つ
- 食べやすくする
- 保存
- 見た目や色を良くする
- 加工上必要
例えば、増粘剤によってとろみがついていると子どもや高齢者でも安心して食べられたり、保存料が入っているからコンビニやスーパーでお惣菜を買えたりするのです。
まとまりが悪い食べ物は誤嚥の原因として時には命に関わります。
他には、人工甘味料だからカロリー・糖分が減るのでダイエット中の人でもジュースを飲めるよ、ということも。
つまり、食品添加物によって「食事に制限がある人の食事の幅を広げている」という面もあるのです。
さらに、もし売っているお惣菜に保存料が入っていなかったら、今よりももっとずっと食中毒の発生と食品の廃棄が多くなっていることは間違いありません。食中毒は安全とは真逆ですし、廃棄が増えたら環境にも悪いですね。
このように、私たちは知らず知らずのうちに「食品添加物=身体に悪い」と刷り込まれていますが、食品添加物があるからこそ安全に暮らせている側面があるのです。
まずは、食品添加物を正しく理解しましょう。
その上で、「赤く着色されハムやウインナーではなく、着色料無添加のものを選ぶ」「保存料無添加の、出来立てのお惣菜を購入する」など、自分で考えた選択をしてはいかがでしょうか。
もし、「うちの子は少食で、でも赤いウインナーなら食べられる」ならそれでいいのです。食品添加物はきちんと科学的に安全性が示された量のみ使われているので、心配はいりませんよ。
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オーガニック・無添加にこだわるべき?まとめ
オーガニック・無添加食品について解説しました。
簡単におさらいしましょう。
- オーガニックが認められた食品には有機JASマークがついている
- オーガニックは環境にもいいが高いので、食費とのバランスをみて取り入れると良い
- 無添加とは製造過程で食品添加物が一切含まれていないこと
- 不必要な食品添加物は避けても良いが、食品添加物に対する正しい知識が必要
毎日口に入る食事だからこそ、気になることがたくさんありますよね。大切なのは情報を読み解く力です。
「身体に良さそう」な表示に惑わされず、それが何を意味するのかを調べて理解してから、購入できるようになるといいですね。