魚を食べるとアタマが良くなる〜♪
スーパーの鮮魚コーナーでつい口ずさんでしまうこの曲のおかげで、『魚を食べると、頭が良くなる』という認識が世間に浸透しました。
「でも、それって本当?一体なぜ?」
「魚を食べると頭が良くなるなら、子どもに食べさせたい!」
面倒な魚料理を頑張って作れば子どもの頭が良くなるのなら、頑張ろう!という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、次の悩みを解決します。
- 「魚を食べると頭が良くなる」の科学的根拠を紹介
- 栄養成分DHAのとり方
世界的に評価の高い『和食』の代表選手である、魚の栄養に迫ります!
いちか 2児の母。
管理栄養士としてクリニックに勤務。その後大学院に進学して博士(医学)を取得。現在は子育ての傍ら栄養ライターとして活躍中。得意分野は悩めるママの栄養指導。科学的根拠がある栄養情報をお届けします。
魚を食べると頭が良くなるのはなぜ?栄養成分を解説
「魚を食べると頭が良くなる」と言われる根拠は、魚の油に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)という栄養素にあります。
DHAとはどんな栄養素?
DHAは「脂質」を作る材料である「脂肪酸」のひとつです。(補足1)DHAは脳などの神経組織に多く存在し、情報伝達を助けてくれます。
しかし、DHAを含むオメガ3脂肪酸は、私たちの体の中で作ることはできず、食べ物から補わなくてはなりません。
そこで、「DHAを多く含む魚を食べよう」となり、「魚を食べると頭が良くなる」と言われるようになったのですね。
*補足1
「脂質」と聞くとなんだか体に悪いイメージが強いですよね。でも実は脂質は、私たちが生きていく上で欠かせない栄養素なのです!
- 細胞を包む膜(細胞膜)の主な材料となる
- コレステロールはホルモンやビタミンDになる
- 脂溶性ビタミン(ビタミンA ,D ,K,E)の吸収を助ける
- 中性脂肪は体内でエネルギーを蓄える、内臓を衝撃から守る など
このように、たくさんの役割があります♪
では、本当に「魚を食べると頭が良くなる」のでしょうか?
実はこれ、半分本当で半分嘘なのです。
DHAで読み書き能力が向上した研究は、再現できなかった!
DHAを摂取すると頭が良くなる根拠としてよく取り上げられるのは、2012年に発表されたオックスフォード大学の研究です。
実験では、読み書きの成績が悪い健康な子ども(7-9歳)に藻由来のDHAを16週間与えたところ、読み書きの能力が向上したと報告しています。
論文:Richardson AJ, Burton JR, Sewell RP, Spreckelsen TF, Montgomery P. Docosahexaenoic Acid for Reading, Cognition and Behavior in Children Aged 7–9 Years: A Randomized, Controlled Trial (The DOLAB Study). PLoS One. 2012;7.
ところが、実はこの研究には続きがあります。
なんと、同じ研究グループが6年後に再現のために同じ実験をしたところ、「DHAによる読み書き能力の向上は見られなかった」と発表しているのです!
論文:Montgomery P, Spreckelsen TF, Burton A, Burton JR, Richardson AJ.Docosahexaenoic acid for reading, working memory and behavior in UK children aged 7-9: A randomized controlled trial for replication (the DOLAB II study).PLoS One. 2018 Feb 20;13(2):e0192909.
研究グループは、再現研究でDHAによる効果が見られなかった理由について、研究対象者の数が少なかったことや選び方、テスト問題の違いなどを挙げています。
つまり、「DHAは脳の成長にとって必要不可欠な栄養素であること」「DHAは魚にたくさん含まれているので魚を食べた方がいいこと」に間違いはありませんが、「DHAを食べることが直接学力向上につながるか」についてはもう少し検討が必要なようですね。
⇒本の読み聞かせの効果とは?研究論文を調査してみた(ロボえもん)
魚を食べてDHAを摂取しよう
DHAをとるには、やはり魚介類がおすすめです。残念ながら、野菜や油、卵などには DHAは全く含まれません。
豚肉は次に紹介するカニカマと同じくらい、他の肉類や乳製品にはほんの少しだけDHAを含む程度なのです。
ほとんど魚を食べない方でしたら、まずは週に1回からでも魚を食べてみましょう。
魚に含まれるDHAの量はどのくらい?
代表的な魚や、子どもが好きな加工食品のDHA含有量を調べてみました。
魚(可食部100gあたり) | DHA含有量(mg) |
カツオ(秋) | 970 |
サバ | 970 |
サケ | 890 |
イワシ | 870 |
アジ | 570 |
シシャモ | 550 |
しらす干し | 340 |
つみれ | 330 |
桜エビ | 310 |
ちくわ | 87 |
まぐろフレーク | 65 |
かに風味かまぼこ | 63 |
魚肉ソーセージ | 50 |
タラ | 42 |
出典:日本食品標準成分表2020年度版(8訂)
DHAはカツオやサバといった青魚に多く含まれています。カツオやサバのDHA含有量は、なんと白身魚であるタラの23倍!
白身の魚はタンパク質が多くカロリーが低いのでダイエット向きですが、DHAは脂肪酸なので油が多い青魚に多いのです。
どちらも利点はあるので、いろいろな種類の魚を食べるのがおすすめですよ♪
また、しらす干しや桜エビなどご飯のお供になりそうな魚や、おやつになる魚肉ソーセージなどの加工品にもDHAは含まれています。
手軽なので、少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。
魚の代わりにサプリメントでいいの?
「脳の成長には魚を食べた方がいい」とわかっていても、いざ実践となるとちょっと尻込みしてしまうのもまた事実。
だって、魚料理は手間もお金もかかるしゴミも増えるので、忙しい毎日に取り入れるのはなかなか難しいのですよね……。
すると「手っ取り早くDHAを摂取できるサプリメントはどうだろう?」と思うかもしれません。
しかし、サプリメントにも注意が必要です。
厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』のHPでも、DHA(オメガ3脂肪酸)について次のように述べています。
「結論:普段の食事に海産物を取り入れることは健康によいことです。ただし、オメガ3脂肪酸サプリメントが効果的かどうかは不明です。」(引用)
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/c03/05.html
残念ながら、現時点では子どもに対してDHAのサプリメントを推奨する科学的根拠はないようです。
基本的にはサプリメントに頼らずに、食事から摂取できる範囲でDHAをとった方が安心できますね。
魚を食べると頭が良くなるのはなぜ? まとめ
「魚を食べると頭が良くなる」の根拠をご紹介しました。もう一度ポイントをまとめますね。
- 魚に豊富に含まれる栄養素DHAは脳や神経に多く存在する脂肪酸である
- DHAは体内で作れないので、食事からとらないといけない
- DHAの摂取量と学力向上の関係はまだ研究成果が不十分
- サプリメントによる DHAの摂取は特にすすめられていない
- DHAは脳の成長に必要不可欠なので、魚を食べよう
今回はDHAのみを取り上げましたが、魚には他にもたくさんの栄養素が含まれています。
調理が面倒だったら缶詰でも構わないので、時々は食卓に登場させてみてくださいね。