「子供が揚げ物が好きでよくやるのですが、油って再利用しても大丈夫?身体に悪くないかな?」
唐揚げやコロッケなどの揚げ物、子どもは大好きですよね。たくさん使った油を捨ててしまうのは、なんだかもったいない気がしませんか?
でも、再利用した油で揚げたものを子どもに食べさせて大丈夫?と不安になりますよね。
そこでこの記事では、次のことを解説します。
- 子供に再利用の油で調理したものを食べさせて大丈夫か。
- 油を再利用せずにすむ揚げ物の方法
揚げ油の処理に悩んで揚げ物を控えている方、必見です。
いちか 2児の母。
管理栄養士としてクリニックに勤務。その後大学院に進学して博士(医学)を取得。現在は子育ての傍ら栄養ライターとして活躍中。得意分野は悩めるママの栄養指導。科学的根拠がある栄養情報をお届けします。
使った油は再利用できる?酸化して危険?
油は空気に触れると酸化(さんか)します。
「酸化」はよくないイメージがありますが、「酸化って何?」と聞かれると、実はよくわかりませんよね。
酸化の身近な例は10円玉です。
発行されたばかりの10円玉はピカピカですが、発行年が古いものは真っ黒ですよね。
これは、10円玉の銅が空気中の酸素と結びついて黒くなった(酸化した)のです。
油の酸化も同じで、空気に触れることで酸素と結びついて酸化します。
さらに、油の酸化は、高い温度になることでますます活発になります。
つまり、高温の油で食べ物を揚げる揚げ物は、普通の油よりも酸化しやすいのです。
酸化した油は体に悪いの?
10円玉は食べませんが、ピカピカの10円玉と黒くなった10円玉、どう見てもピカピカの方が身体に良さそうですよね。
そのイメージは正しいです。
大手製油会社の日清オイリオのHPには、次のように書いてあります。
普通に食べられる程度であれば直ちに害があるとは考えられません。
酸化した油を食べるとご気分が悪くなったり、むかむかと胸やけを感じる方もいます。
但し、鼻につくような臭いがでるほどの油では、嘔吐、下痢、腹痛等食中毒類似の症状が出ることがございます。
引用:Nisshin Oilio お客様相談窓口 https://www.nisshin-oillio.com/customer/faq_detail.html?id=4000171
つまり「もう一回使おうかな」と思えるような見た目やにおいの油であれば、それによってすぐに健康に悪影響があるわけではないようです。
ただ、酸化した油はおいしくありませんし、具合が悪くなることもあるので、なるべく使用は控えたいですね。
日をまたいで油を再利用する場合には、油の酸化が進まないように専用のオイルポットの使用をおすすめします。
最近では高性能のフィルターでろ過できるオイルポットが売っているので、それなら数回繰り返して油を再利用できますよ。
再利用の油を子供に食べさせても大丈夫?
油を再利用するときには、子供は大人よりも免疫力が弱いという点も考えたいところです。
2011年に、焼肉屋でユッケ(生肉)による集団食中毒が起きました。
181名が食中毒を発症し5名亡くなりましたが、そのうちの2名は6歳、1名は14歳です。
参考:Wikipedea フーズ・フォーラス https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B9#%E3%83%A6%E3%83%83%E3%82%B1%E9%9B%86%E5%9B%A3%E9%A3%9F%E4%B8%AD%E6%AF%92%E4%BA%8B%E4%BB%B6
「焼肉屋で」「生肉を」食べる人は、どう考えても大人が中心ですよね。
それなのに亡くなったのは子供が多いという事実は、子供は大人よりもより安全に気を配らなければいけないということを示していると思います。
「一度の料理の際に、野菜を揚げた油でお肉も揚げる」といった再利用は、よほど油が汚れていない限り問題はありません。
実際、私もよくやっています。
野菜と肉の両方を揚げたい場合は、野菜から先に揚げるようにすると油が汚れにくいですよ。
問題は、日をまたいで再利用する油です。
性能のいいオイルポットを使用して油をきれいな状態に保てるのならば、再利用した油で調理したものを子供に与えても大丈夫でしょうが、自己流の保管法は要注意です。
どんな油なら再利用できる?
油を再利用するときには、見た目やにおいをよく確認しましょう。
当てはまるようなら油が酸化している証拠なので、使用はおすすめしません。
色が濃い・にごっている
使用前の油は透き通っていますね。
酸化してくると、油は黒くなります。
色が変わった、と感じたら使用はやめましょう。
嫌なにおいがする
油を火にかけた時点で「油臭いな」と感じるような嫌なにおいがしたら、使用はやめましょう。
出た泡が消えにくい
加熱した油に食材を入れると、小さな泡が出ます。
新しい油の場合、この泡はすぐに消えますが、消えなくなってきたら酸化している証拠です。
粘りが出る
使用前後の油に粘り気がある場合は、新しい油にしましょう。
油を再利用せずに済むとっておきの方法
油を持ち越さずに済むように揚げ物ができれば、酸化の心配をする必要がありません。
そこで、管理栄養士の私が実際にやっている、とっておきの手順をご紹介します。
フライパンで揚げる
たっぷりの油にポチャンと唐揚げ用のお肉を入れる……これはいかにもおいしそうですが、フライパンでだって十分おいしく揚げ物ができますよ!
油の量としては5mm〜2cmもあれば、十分に揚げ物ができます。
もともと使う油の量が少なければ、油を無駄にすることもありません。
フライパンで揚げ物をする時のポイントは、次の2つです。
- 材料を小さめに切る
- ゆとりのある量をフライパンに入れる
材料を小さめに切る
フライパンで揚げ物をする時は、途中で食材をひっくり返し両面揚げましょう。
そのため、必要な油の量は、食材の半分が浸る程度で十分です。
つまり、材料を小さく切るほど必要な油の量は少なくなります。
唐揚げなど、子供はむしろ小さめの方が食べやすいですよね。
市販の唐揚げなどは、わざわざ切ってあげたりしませんか?
フライパンで小さめの唐揚げを作ると、子供も食べやすいですし、お弁当にも重宝しますよ。
ゆとりのある量をフライパンに入れる
油の量が少ない分、一度に食材を多く入れすぎると油の温度が下がりやすくなります。
それによってカラッと揚がらずにベトっとしてしまうことも。
そうならないために、一度にフライパンに入れる量の目安はフライパンの大きさの半分以下にし、食材同士がなるべくくっつかないようにしましょう。
油を吸う食材を最後に揚げる
油を吸う食材を最後に揚げることで、残る油を少なくしよう!という作戦です。
食材や調理法によって油を吸う量は違います。
水分を多く含む食材は、含まない食材よりも油を吸いますし、素揚げよりも衣をつけた方が油を吸います。
とはいえ、油を全部吸おうとした天ぷらは残念ながらベチャベチャでおいしくないですよね……。
そこでおすすめなのは、油をよく吸う野菜を最後に揚げること。
「肉より先に野菜を揚げた方が油が汚れないのでおすすめだよ」と上でお伝えしたこととは矛盾しますが、ぜひ最後に油対応用のお野菜を用意しましょう!
私がいつも用意しているのは「なす」か「小麦粉をまぶした薄切りかぼちゃ」です。
どちらも理由は「油をよく吸うこと」「油がなくなったとしても、焼いてもおいしい」ことです。
特になすは、食材の重さの14%の油を吸ってくれます。
もちろんその分カロリーが高くなりますが、フライパンでの揚げ物に使った程度の油なら使い切ってくれるので、とても重宝しますよ。
ただし、なすは苦手な子供も多いので、子供に食べさせるならかぼちゃの方がいいかもしれません。
小麦粉をまぶすことで、油を吸う量も増えますし、おいしいですよ!
⇒白砂糖・白米・小麦粉は体に良くないはウソ!子供も大人も悪影響なし。
使った油を再利用しても大丈夫?まとめ
使った油を再利用し、子供に食べさせても大丈夫かを解説しました。
もう一度ポイントをまとめますね。
- 使った油を再利用する場合はオイルポットを使うなど、酸化しないように気をつける
- 酸化していそうだったら使うのをやめる
- 油を使い切る方法もおすすめ
揚げ物はおいしいですが、油の処理は大変ですし、捨てるのはもったいない気分ですよね。
安全に再利用するかなるべく使い切る方法で調理をし、揚げ物を楽しんでくださいね。
【油の酸化に関する研究論文】
食用油脂の劣化及びその防止に関する研究 太田静行 北里大学水産学部https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/38/9/38_9_677/_pdf
油脂および油脂食品の酸化的劣化とその評価法に関する研究 藤本健四郎https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1996/46/3/46_3_249/_article/-char/ja/