宇宙飛行士は、宇宙でどんな食事をとるのか、ご存じですか?
限られた大きさの宇宙船内で活動をする宇宙飛行士にとって、食事は生命・心身の健康維持だけでなくひとつの楽しみです。
しかし、食べ物を宇宙に持っていくのは大変!
宇宙においしい食べ物を届けるために、宇宙食にはさまざまな工夫がされているのです。
この記事では、宇宙食の種類の紹介と、子どもと気軽にできる宇宙食ラーメン作りのレポートをします。
いちか 2児の母。
管理栄養士としてクリニックに勤務。その後大学院に進学して博士(医学)を取得。現在は子育ての傍ら栄養ライターとして活躍中。得意分野は悩めるママの栄養指導。科学的根拠がある栄養情報をお届けします。
宇宙食って何?どんな種類があるの?
宇宙に食べ物を持っていくには、長期保存ができる高度な衛生管理や、微小重力(いわゆる無重力)で飛び散らない工夫が必要です。
宇宙食には次の種類があります。
- 加水食品:お湯や水で戻す食品
- 温度安定化食品:そのまま食べられるレトルト食品や缶詰
- 自然形態食品・半乾燥食品:ナッツやクッキーなど、そのまま食べられる加工食品
- 調味料:塩やこしょうも液体になっている
- 生鮮食品:果物や生野菜など
- 放射線照射食品:放射線照射で殺菌し、賞味期限を長くした食品
参考:JAXAホームページ
宇宙食供給基準があり、各国がそれに基づいて宇宙食を開発しています。
日本ではJAXAが「宇宙日本食認証基準」を定めており、登録希望業者はいつでも申請が可能です。
日本食は和食に限定されているわけではなく、カレーやラーメンなども認証されています。
宇宙食になるラーメンを幼児と一緒に作ってみた!
今回4歳と7歳の子どもと一緒に、宇宙食ラーメン作りに挑戦してみました。
「宇宙飛行士さんが宇宙で食べやすいラーメンを作ってみよう」と誘うと、二人ともとても喜びワクワクしていました。
使った材料は写真のとおりです。
材料(幼児2名分)
- 市販の生ラーメン……1玉
- 片栗粉(とろみ付け用)……大さじ2
- 卵……2個
- コーン……お好み
- わかめ……お好み
調理のポイントは、宇宙でバラバラにならないように「麺を結んでかたまりにすること」「スープに固めのとろみをつけること」です。
参考:JAXA. 宇宙に持っていける食べ物の条件は?ー宇宙食に挑戦!ー
1、麺を結ぶ
最初にして最大の難関は、麺を結ぶことでした。
微小重力空間でバラバラにならずに食べられるよう、ほぐした生麺を数本ずつ束ね結びます。
4歳は、母が束ねて結び、最後のひっぱるところだけお手伝い。
ただ、すぐに飽きて、麺で遊びはじめました。
宇宙に持っていくには衛生管理がとっても大切ですが、4歳に生麺を触らせた時点でここは諦めました。
7歳は、最初に一緒にやって見せたら、試行錯誤しながらひとりでもできるように。
ただしこちらも数個やったら「疲れた」と『5本ずつ束ねる』係になり、残りは母がひたすら結びました。
柔らかい麺をちぎれないように、指先を使って結ぶのはとても集中力がいるようでした。
作業には飽きても「宇宙食のラーメンを作る」こと自体には全く飽きず「結ばないで宇宙でラーメン食べたらあちこち飛んで行っちゃうのかなぁ」などと話が盛り上がりました。
5本ずつ束ねただけでもかなりまとまりました。
本当は麺の長さが半分の方が一口サイズになるので望ましいですが、それは幼い子どもたちとやるには難易度が高すぎました。
2、卵の殻をむく
ラーメンの具用に作ったゆで卵の殻をむきました。
この作業は4歳と7歳、どちらも楽しくできますよ。
「たくさんコンコンして、カラぜんぶにヒビを入れるとむきやすいよ」と声をかけました。
もちろんボロボロになった箇所もありますが、それもご愛嬌。
3、麺を茹でる
結んだ麺を茹でます。
結び目の内側は火が通りにくいと考え、麺袋に記載されていたゆで時間よりも30秒長く茹でました。
4歳が鍋に麺を入れ、7歳が菜箸で麺をほぐしたりかきまぜたりしました。
鍋に触らないこと、火に気をつけるよう繰り返し声をかけました。
茹で上がった麺はザルに上げて水切りをしておきます。
4、スープ作り
インスタント麺は通常器にスープの素とお湯を注げば完成ですが、今回はとろみをつけるためにフライパンでスープを作ります。
まずはとろみをつけるための水溶き片栗粉を用意。
固めにとろみをつけるために、300mlのスープ量に対して大さじ2杯の片栗粉を大さじ4杯の水に溶かしました。
けんかにならないように、2人で半分ずつ挑戦します。
4歳にはまだすり切りは難しいですが、そこは大体で構いません。
7歳はだいぶ上手にできますよ。
片栗粉の溶かす時の変化(混ぜると最初は固いのに力を加えると突然溶けること、しばらく経つとまた沈んでいること)も、子どもたちにとってはとても興味深かったようです。
鍋にスープの素と水を入れ火にかけ、混ぜます。
沸騰したら具材を加え(今回はコーンとわかめ)、一度火を止めます。
7歳がよく水に溶かした片栗粉を少しずつ入れ、母が全体を混ぜ溶かしました。
再び火にかけ、とろみがつくまで混ぜます。
片栗粉がダマになったら困るので、この作業は母が担当しました。
この写真くらいの固めのとろみがつくようにしましょう。
スープが麺によく絡み味が濃くなります。
あらかじめ薄めのスープをつくるのがおすすめです。
スープにとろみがついたら火を止めて、麺と卵を入れて混ぜます。
5、盛り付け&試食
本物の宇宙食ラーメンは真空パックに入っていますが、参考資料に「衛生面を考慮して、ここは通常の容器から食べましょう」と書いてあったため、器に盛りました。
麺がまとまっている上にしっかりととろみがついているので、とても食べやすくなっています。
これなら微小重力空間でも飛び散らなさそう!
結んでいるラーメンってどうなのだろう……と思いながら食べましたが、全く違和感なくおいしかったです。
そして見た目通りとても食べやすい!
宇宙とは違いますが、幼い子どもや高齢者でも食べやすい形になっていました。
子どもたちも「食べやすい!これなら宇宙でもこぼれなさそうだね。」と言っていました。
「でも、やっぱり普通のラーメンの方がいいな。」とも(笑)
食べている間にも、「宇宙にはどのくらいでいけるのかな」「ロケットはどのくらい速いのかな」など、宇宙の話題で盛り上がりました。
宇宙食にはどんな種類がある?まとめ
宇宙に持っていくための食べ物は、長期保存に耐えられる衛生面と、微小重力空間でも飛び散らない工夫が大切です。
自宅で子どもと宇宙食作りを楽しむときも、このポイントを意識してみてくださいね。
味噌汁や煮物なども、とろみを強めにつけることで宇宙食の気分が味わえますよ。
「ちょっと難しいかな?」と思ってもできる範囲でやらせてみると、指先の発達や集中力が身に付きます。
もちろん作る際には、色々なことをお話しながら親子で宇宙に思いをはせてみましょう。