「白砂糖・白米・小麦粉は健康に悪い」
「栄養成分を全て削っている不自然な食品だ」
いつの頃からか、白砂糖・白米・小麦粉についてこんな声が聞こえるようになりました。
結論を先に言うと、白砂糖・白米・小麦粉が、直接健康に何らかの悪影響を及ぼすと言うデータはありません。
もしこれらに何らかの毒があれば、普通に売られているわけがないので当然ですね。
これらの食べ物がが身体に良くないと言われるポイントは「精製」です。
精製によって「栄養がなくなり」「肥満や糖尿病になりやすい」などと言われています。
とはいえ、甘いものも白いご飯も、パンも、とってもおいしいですよね。
「子供にも食べさせない方がいいの?」と気になってきます。
そこでこの記事では、白砂糖・白米・小麦粉のと健康の関係を、科学的根拠に基づいて管理栄養士が解説します。
いちか 2児の母。
管理栄養士としてクリニックに勤務。その後大学院に進学して博士(医学)を取得。現在は子育ての傍ら栄養ライターとして活躍中。得意分野は悩めるママの栄養指導。科学的根拠がある栄養情報をお届けします。
白砂糖は体に悪い?嘘です!
私たちが「砂糖」と呼んでいるものは、化学的には「ショ糖」と言われる『ブドウ糖と果糖が1つずつくっついた物質』を指します。
砂糖の主な原料はサトウキビや甜菜(てんさい)です。
サトウキビや甜菜は植物なので、もちろん砂糖以外にもいろいろな栄養素を含んでいます。
そのサトウキビやてんさいからショ糖を取り出す行為が「精製」です。
精製によりショ糖以外の成分が取り除かれるため、ショ糖本来の色として白くなります。
決して漂白をしているわけではありません。
栄養がなくなる?
「白砂糖が身体に悪い」理由として有名なのが、「精製され、ショ糖以外の栄養素がなくなる」ことです。
白砂糖と黒砂糖100gあたりのの栄養価を比べてみましょう。
白砂糖(上白糖) | 黒砂糖 | |
エネルギー(kcal) | 391 | 352 |
たんぱく質(g) | 0 | 1.7 |
脂質(g) | 0 | Tr |
炭水化物(g) | 99.3 | 90.3 |
カリウム(mg) | 2 | 1100 |
カルシウム(mg) | 1 | 240 |
鉄(mg) | Tr | 4.7 |
レチノール活性当量(μg) | 0 | 13 |
ビタミンB1(mg) | 0 | 0.05 |
ビタミンC(mg) | 0 | 0 |
食物繊維(g) | 0 | 0 |
Tr:検出される最小のレベルよりも少ない
引用:食品成分データベース https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
確かに白砂糖には、炭水化物以外の栄養素はほぼ含まれていません。
「栄養を削り取っている」などと煽る表現をしているブログ等も見かけますが、そもそもショ糖のみにするのが精製なので、それ以外の栄養素がなくなるのは当然です。
つまり、『精製された白砂糖はほぼ炭水化物になり、精製していない黒砂糖にはミネラルが含まれている』というのが事実です。
また、黒砂糖であっても、ビタミン類や食物繊維はほぼ含みません。
白砂糖は体に悪い?
ブドウ糖と果糖でできた二糖類であるショ糖は、でんぷんに比べると吸収速度が早く、「血糖値が上がりやすい」点には気をつけたいところです。
2015年、WHOは砂糖を含む糖類のとりすぎを懸念するガイドラインを公表しました。
参考:Sugars intake for adults and children
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/149782/9789241549028_eng.pdf
このガイドラインでは、WHOは3つのことを提言しています。
- 一生を通して、フリーシュガー(砂糖を含む単糖・二糖類)の摂取を減らすことを強く推奨する
- 成人・小児とも、フリーシュガーの摂取量をそうエネルギー摂取量の10%未満に減らすことを強く推奨する
- できれば5%未満に減らす
ガイドラインの根拠となる研究結果を、駒沢女子大学の西村一弘先生が精査して、2020年に日本栄養士会雑誌に報告しています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjda/63/8/63_447/_pdf/-char/ja
それによると、子供を対象に「フリーシュガー入りの食べ物や飲み物を控えるよう指導」した介入研究では60%の研究で食事療法を守ることがそもそも難しかったそう。
体重の変化にも、差が認められなかったとのことです。
一方で、別の5つの観察研究によると、甘い飲み物を毎日摂取している子供は、全く・ほとんど甘い飲み物を飲まなかった子供よりも約1.6倍過体重・肥満のリスクが高かったそうです。
つまり、フリーシュガーそのものではなく、『フリーシュガーのとりすぎによって全体のエネルギー摂取量が増えると肥満になるよ』という、ごくごく普通の結論です。
砂糖は調味料なので、食事の中ではあまりたくさんは食べません。
「それでも、少しでもミネラルをとりたい!」 というママは、黒砂糖を選ぶのがおすすめです。
逆に「黒砂糖の独特の味が嫌」」少しでも節約したい」という読者様は、白砂糖でもまったく問題はありませんよ。
それよりも、間食として摂取する砂糖を減らしましょう。
「砂糖がたっぷり入ったお菓子を好きなだけ食べる」「飲み物はいつも甘いもの」という食習慣を避けることが大切です。
白米・小麦粉は体に悪い?子供は食べられる?
それでは、白米や小麦粉はどうでしょうか?
結論から言えば、「白米や小麦粉は子供の健康を害する」という科学的根拠はありません。
精白米と玄米100gあたりの栄養価を比較
まず、精白米と玄米100gあたりの栄養価を比較してみましょう。
精白米 | 玄米 | |
エネルギー(kcal) | 342 | 346 |
たんぱく質(g) | 6.1 | 6.8 |
脂質(g) | 0.9 | 2.7 |
炭水化物(g) | 77.6 | 74.3 |
カリウム(mg) | 89 | 230 |
カルシウム(mg) | 5 | 9 |
鉄(mg) | 0.8 | 2.1 |
レチノール活性当量(μg) | Tr | 0 |
ビタミンB1(mg) | 0.08 | 0.41 |
ビタミンC(mg) | 0 | 0 |
食物繊維(g) | 0.5 | 3.0 |
引用:食品成分データベース https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
小麦粉(強力粉)の栄養価
続いて、小麦粉(強力粉)の栄養価です。精製度の高い1等と、全粒粉で比較しました。
強力粉(1等) | 強力粉(全粒粉) | |
エネルギー(kcal) | 337 | 320 |
たんぱく質(g) | 11.8 | 12.8 |
脂質(g) | 1.5 | 2.9 |
炭水化物(g) | 71.7 | 68.2 |
カリウム(mg) | 89 | 330 |
カルシウム(mg) | 17 | 26 |
鉄(mg) | 0.9 | 3.1 |
レチノール活性当量(μg) | 0 | 0 |
ビタミンB1(mg) | 0.09 | 0.34 |
ビタミンC(mg) | 0 | 0 |
食物繊維(g) | 2.7 | 11.2 |
引用:食品成分データベース https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
エネルギーや三大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)の構成は、白米・1等の小麦粉と玄米・全粒粉で大きくは変わりません。
しかし、カリウムや鉄などのミネラルや、糖質の代謝に必要なビタミンB1などは玄米・全粒粉で圧倒的に多いです。
また、2019年に、ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の研究者らが、53件の観察研究についてメタ分析をおこないました。
その結果、全粒粉が2型糖尿病発症率の低下に関連することがわかったそう。
参考:Role of diet in type 2 diabetes incidence: umbrella review of meta-analyses of prospective observational studies. BMJ. 2019 Jul 3;366:l2368.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31270064
ただし、分析に用いられた研究は日本人の子供のデータではないことには注意が必要です。
また、玄米は食物繊維が多い分消化に負担がかかることや、精白米よりも残留農薬が多いなどの面もあります。
そのため、子供にとって白米・小麦が身体に悪いということはありません。
他のおかずと組み合わせて色々と食べることが大切です。
もし玄米食を取り入れてみたい場合は、3分づき米や、米の胚芽部分だけ残した胚芽米など、子供の食べやすさや好みによってお米や小麦を選んでみるのもいいですね。
⇒ヴィーガン食は子供の身長や骨に悪影響?ベジタリアンについて最新論文から解説
白砂糖・白米・小麦粉は体に悪い?まとめ
白砂糖・白米・小麦粉を子供も避けるべきかについて解説しました。
ポイントをおさらいしましょう。
- 精製された白砂糖・白米・小麦粉はミネラル分などが大幅に減る
- 子供において、これらの食べ物が健康を害すると言う科学的根拠はない
- お菓子やジュースをとりすぎない、炭水化物ばかり食べないバランスの良い食生活が大切
結局、子供が健やかに育つために一番大切なのは、「いろいろなものを程よく食べること」です。
ひとつの食べ物だけで、成長に必要な栄養素をすべて補うことはできません。
たくさんの食品を食べることで、お互いに栄養を補い合えるのです。
「白米も楽しむ、玄米も楽しむ」と、色々な食材にチャレンジしてみてくださいね!